こんにちは。理学療法士、ボディワーカーのDaisukeです。
今回はDibs®︎運動連鎖∞整体の視点から見た「歩行」についての理解を深めていきましょう。

目次(Contents)
位置エネルギーと運動エネルギー①

まずは「位置エネルギー」と「運動エネルギー」についてです。これは運動学でも述べられていることですが、歩行において前方の推進力を見出しているのは、「位置エネルギー」と「運動エネルギー」です。また、歩行における前方への推進を円滑にしているのが足部における「ロッカー機能:ロッカーモーション」です。このロッカー機能による転がりによって歩行における「位置エネルギー」と「運動エネルギー」の交換効率が円滑になっています。概ねですが歩行において「位置エネルギー」+「運動エネルギー」=一定になります。
「位置エネルギー」はその名の通り、重心の位置が高ければ高いほどエネルギーの大きさは大きくなります。
「運動エネルギー」は前方への推進速度が速ければ速いほどエネルギーの大きさは大きくなります。
この歩行における「位置エネルギー」と「運動エネルギー」が働く支点を理解する上で重要になるのが「倒立振り子理論」になります。
振り子といえば上に支点があり、その支点を軸にブランコのように下では振り子が行ったり来たりするものですが、これが倒立しているので支点が下にあり、上で振り子がなされるということになります。上の図では足部のロッカー機能を支点としてその上部にある身体が前方へ推進する時に振り子のような重心の軌道を通ります。なので、歩行では「倒立振り子」と言われるのです。
歩行中では両脚支持の際に1番「位置エネルギー」が小さくなり、「運動エネルギー」が大きくなります。つまり速度が最も速くなる時とも言えます。逆に立脚中期において1番「位置エネルギー」が大きくなり、「運動エネルギー」が小さくなります。ここでは速度が最も遅くなる時になります。
ここでの、ポイントは歩行における倒立振り子は歩行周期の中での支点が変化するということです。これは3つのロッカー機能によるものです。ヒールロッカー(倒立振り子では踵支点)、アンクルロッカー(倒立振り子では足関節支点:距骨滑車での転がり)、フォアフットロッカー(倒立振り子ではMP関節支点)という3つのロッカー機能においてその支点が円滑に移行されていきます。このロッカー機能の移行の中で、「位置エネルギー」と「運動エネルギー」のエネルギー交換がなされているのです。
歩行におけるロッカー機能と、倒立振り子、「位置エネルギー」と「運動エネルギー」の交換効率の3つの視点が歩行の理解において重要であるということです。
このエネルギーの移行が円滑にいかなければエネルギーは足部に伝わりきらず(運動連鎖としての伝達がなされず)、力が分散されてしまいます。これらの力学的な部分と足部機能の理解を背景に運動連鎖を理解していけば、Dibs®︎運動連鎖∞整体における「全ては歩行に紡がれる」という部分に繋がっていくといくことになりますね。
位置エネルギーと運動エネルギー②

次に位置エネルギーと運動エネルギーの移行の推移についてです。前述したように足部の機能(ロッカー機能)と倒立振り子、位置エネルギーと運動エネルギーの変換によって前方への推進がなされるわけなのですが、この3つのシステムが成り立つことによって歩行中には上図のような軌道をたどります。
倒立振り子のみ考えれば、扇形に重心の移動が推移していきそうなのですが、実際には波形です。これはやはり倒立振り子の中で、足部のロッカー機能が働いているため、倒立振り子の軸自体が変化していくということがポイントになります。
ですので、重心の移動線を見てみると、上の波形と下の波形が交互に繰り返されていることが分かります。
逆に言えば、この重心の移動線を通らなければ、「位置エネルギー」と「運動エネルギー」の変換の円滑性がなくなり、重心の移動線が波形ではなくなってしまいます。変換効率が悪いということは前方への推進も円滑になされませんので、そのエネルギーは足部の蹴り出しへ繋がらず、上行性運動連鎖の破綻へ繋がります。エネルギーの変換を円滑に行うためには、上行性と下行性運動連鎖が相互に円滑性を持って協調し合う必要性があります。この円滑性と協調性が破綻してしまえば、いわゆる「破行」へと繋がってしまいます。
歩行の中で現象として現れている部分は、この3つのシステムの破綻の結果として生じていることも多々みられます。
重心の移動線の形状やその形状の逸脱に視点を向けることによって、より歩行という動作の中での機能やシステムの解釈を全体性と個別性を統合した状態で理解することができますよ。
立脚期における背部の運動連鎖

立脚期における背部の運動連鎖についてです。ここでは、歩行中での脊柱のカップリングモーションを司る背部の要素について述べていきます。
従来では、脊柱のカップリングモーションでは前部の運動連鎖(前鋸筋-同則外腹斜筋群-対側内腹斜筋群-股関節内転-足部)の連動の重要性は述べられていますが、Dibs®︎運動連鎖∞整体では背部の運動連鎖についても重点をおいてアセスメントしていきます。これはなぜかというと、脊柱の軸回旋を行う中で、前部の機能だけでは、歩行中では身体の前傾を同時に招いてしまうためです。背部の機能と前部の機能が協調することで、円滑な軸回旋が生まれ、回旋の力による前方への推進のエネルギーを足部まで伝えることができます。またこの背部の運動連鎖の機能破綻によって、立脚中期〜立脚後期にかけての股関節の伸展を腰部伸展での代償がみられ、結果として、抗重力伸展活動の保持が困難になるためです。
立脚側の下肢と遊脚側の背部の筋肉の連鎖になります。
遊脚側の下後鋸筋により下部胸郭が折りたたむように後方に引かれる→その力は立脚側の股関節内転筋(大内転筋等)へ伝わり、股関節の進展を招く→下腿後面の筋肉へ力は伝わる→足底部の筋群へ→立脚後期の足部のアーチの挙上と蹴り出しへ。という流れで運動が連鎖していきます。これは全て背部の筋群の協働によって成り立つものです。
これらの筋群は中部〜下部胸郭の回旋、腰部の回旋、骨盤帯の生理的な運動の連鎖、股関節の分離運動(特に伸展:股関節内転位の保持とハムストリングスの使用)、歩行中の立脚後期におけるウィンドラス機構(足部のアーチの引き上がり)という脊柱〜足部にかけての機能とシステムを構成しています。
つまり、身体の運動連鎖の評価(特に立脚後期において)を行う際には、これらの機能が共同しているかどうかをみることで歩行中の機能を部分的に切り取って評価することができということになります。
ポイントは脊柱の回旋と股関節伸展の分離運動、足部のアーチ機能(特に足関節底屈と足部アーチ挙上の保持)になります。
インソールの作成を行う際にも、これらの視点を持っていることで、立脚中期〜立脚後期にかけてのパットの挿入位置を検討しやすくなりますよ。
立脚期における後方の重心線(後方ライン)

Dibs®︎運動連鎖∞整体では身体の、重心線を3つに分けて理解していきます。「前方ライン」、「中央ライン」、「後方ライン」という3つの重心線を定義しているのですが、今回は「後方ライン」について述べていきます。
後方ラインに位置する身体のランドマークは以下の通りです。
・後頭部
・胸椎棘突起
・仙骨後面~坐骨
・踵(後足部)
これらのラインは歩行中は弓の弦のように常にテンションを保ちつつ、身体後方のシステムの構成を保持し続けます。つまりたわむことはなく、一定の張りを保ち続けています。
このシステムが成り立つ(後方ライン)=立脚期における背部の運動連鎖が成り立つということに繋がっていきます。
抗重力伸展活動が成立している際には、直立二足での立位では、この「後方ライン」上のランドマークは一直線上にあります。
抗重力伸展活動におけるアセスメントのポイントはランドマーク同士のポジションとシステム(抗重力伸展活動のための機能)が働いているかどうかということになります。
ランドマーク同士の位置関係をみるなかでも、運動連鎖の視点を含めるので、上行性運動連鎖の視点と下行性運動連鎖の視点の両方の視点の中でランドマークの位置を評価していく必要があります。上行性運動連鎖の視点では、土台の上に乗っている骨がどのような位置なのかを見ていくことになります。下行性運動連鎖の視点では上に乗っている骨の状態がどのような状態かを見ていくことになります。
実際には、この両方の視点を持ちながら、姿勢のアライメントを評価していく必要があるということになります。
立脚期における前部の運動連鎖①

次に立脚側の前部の運動連鎖についてです。上記のように立脚側の前鋸筋-立脚側の外腹斜筋-遊脚側の内腹斜筋-遊脚側の股関節内転筋-足底部までは連動しています。この連動があることによって遊脚側の下肢をまっすぐ前方へ振り出すことができるのです。別の視点で捉えてみると、上図では右立脚なので、脊柱の左回旋という動きと左股関節の内転、左股関節の内転に対しての左股関節の外旋によって相互に力を相殺・統合し、前方への推進を可能にしています。立脚側の前鋸筋から遊脚の下肢の連動と協調性が取れていなければ立脚側での重心の移動も円滑にはいかなくなってしまいます。
身体の基本的な機能として、「関節の中心化」がありますが、歩行中のシステムとしてもこれらの基本的な機能がいかされているのです。
つまり、立脚側と遊脚側の統合がなされていなければ、そもそも脊柱の回旋を「軸回旋」として行うことができないのです。
ここでのポイントとしては、移動(歩行)の力学的手段としての「回旋」という動きの軸を構成するためには、立脚側と遊脚側の協調的な動きが必要ということです。
歩行のアセスメントをする際にも、このような対側の協調性の視点を持っていれば、全体性として動きの要素をより明確に分析することができるようになりますよ。
立脚期における前部の運動連鎖②

前項でも少し述べましたが、ここでは立脚側と遊脚側における双方のシステムの連動についてです。前項では前部に焦点をあててお伝えしましたが、ここでは前部と背部の協調性の特徴についてです。
特徴としては「立脚と遊脚のそれぞれの筋肉の働きは対側の筋肉の働きと連動する」ということです。
上の図では右立脚を表しています。前部の連動を見てみると、立脚側の前鋸筋-立脚側の外腹斜筋-遊脚側の内腹斜筋-遊脚側の股関節内転筋-足底部でしたね。
後部の連動を見てみると、遊脚側の下後鋸筋-立脚側の股関節外旋筋-立脚の股関節内転筋-立脚のハムストリングス-下腿の筋群-足底部になります。
つまり、前部の機能の連動として、立脚の上半身の機能は遊脚の下半身の機能が協調しており、後部の機能の連動として、遊脚の上半身の機能は立脚の下半身の機能と協調しているということになります。
これらの前部と後部の連動が双方に取れることによって、脊柱における軸回旋が成立するのです。
これらの機能のどちらかが逸脱してしまえば、軸回旋が行われず、「代償動作」を行うことで前方への推進力を作り出してしまう可能性があるのです。もしくは脊柱の回旋を行わずに前方推進してしまう可能性がありますね。
前部のみ、後部のみの協調性に加えて、前部と後部の協調性という視点を持つことで、歩行全体のエネルギーの移行や重心移動の円滑性をよりリアルに捉えることができるようになりますよ。
立脚と遊脚における筋収縮の特徴

次に歩行中の筋収縮の特徴についてです。これらを知っていることで、歩行の相をかいつまんで評価していく際にも、機能をより明確に評価していくことが可能になります。
上の図では下半身の筋収縮の特徴を述べています。立脚側においては遠心性収縮(筋肉の長さが長くなりながら収縮している状態)が主になります。股関節の外転筋を例にとると、本来股関節外転筋といえば股関節を外転させるのですが、立脚ではこの股関節外転筋は遠心性収縮を成すため、「股関節の内転制動筋」として働きます。
遊脚側の下肢に関しては求心性収縮(筋肉の長さが短くなりながら収縮している状態)が主となります。股関節の屈曲を例にとると、遊脚では股関節の屈曲筋がそのまま股関節を屈曲させることによって脚を前に振り出すことができています。
このように立脚側と遊脚側はそれぞれ筋収縮の特徴が異なりますし、これに加えて、前項でもお伝えしたように前部と後部の協調性や前部のみの協調性、後部のみの協調性といった要素を統合してアセスメントすることで歩行における理解がより深まりますし、筋肉や関節、協調性といった部分をより明確に、リアルに捉えることができるようになりますよ。
今回も、少し長かったですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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Daisuke Nobuchika
・Bodywork Salon Compasses代表
・Somatic Neutrality®考案者
・Dibs®︎考案者
・Innate Pilates®︎考案者
・理学療法士
・Somatic Experiencing™ Practitioner(SEP)
・DARe Practitioner
・Somatic Experiencing™︎ マスタークラス Eye of the needle(Ⅰ&Ⅱ)修了
・Somatic Experiencing™︎ マスタークラス 慢性疼痛と症候群 修了
・Sequencing Workshop 修了
・Yoga Teacher(Kaivalyadhama Yoga Institute Certificate Course in Yoga修了)
・Somatic Resilience and Regulation®修了
・DE GASQUET®INSTITUT基礎講座、ぺリネのABC受講修了
広島県福山市出身。小学校から社会人にかけてバスケットボールに積極的に取り組み、全国大会やAll Japanに出場。高校生の時に人の役に立つ仕事に就きたいという思いと部活動のトレーナーが理学療法士であることもあり、理学療法士を志す。2011年、理学療法士免許習得。総合病院、整形外科病院在籍中にピラティス、ヨガに出会う。2017年ファンクショナル ローラー ピラティス マスタートレーナーコース修了。2022年SEP取得。同年SRR修了。2023年Kaivalyadhama Yoga Institute Certificate Course in Yoga修了。現在、理学療法士とサロンでのセラピストとして活躍中。 また、臨床中に患者様と関わる中で「病気になる前の予防の重要性」を感じ、『病気に囚われない予防の実現』を人生のテーマに日々邁進している。
Bodywork Salon Compassesとは
こころとからだの指針を紡ぐBodywork Salon Compassesではヨーガとピラティスなど心身のアクセスを通じた心身コンディショニング・姿勢の改善、タッチセラピー(マッサージ、整体)による痛みのケア(関節痛、首痛、頸部痛、首コリ、肩凝り、背部痛、腰痛、股関節痛、膝痛、足痛や足部の変形:外反母趾など)、循環改善・むくみケア、姿勢と歩きの改善を行っています。ホームページではセッションの内容や料金について詳細がわかりますので、「ホームページはこちら」をクリックしてのぞいていみてください。
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