運動連鎖整体®︎ ブログ0.05 〜パルペーションの実際〜

 こんにちは、広島県福山市でボディワークサロンをしています、理学療法士・ボディワーカーのDaisukeです。
 前回に引き続き、運動連鎖整体®︎におけるパルペーションテクニックについてですが、今回は実際の臨床場面での視点からパルペーションについてお伝えしていきます。

パルペーションにおける組織へのフィット

 

 前回のブログでは、パルペーションの詳細についてお伝えしました。例えば、パルペーションを行う際の「圧」や「接触面積」、「リズム」など、パルペーションを行うにあたっての視点について特に詳しくお伝えしました(前回のブログ記事はこちらをクリック)。How toの背景にある考え方の部分ですね。
 今回はその視点を使う時の実際の臨床テクニックと考え方についてお伝えしていきます。

 まずは、パルペーションを行う際に、身体に触れる際の視点として、セラピスト自身が触れる組織にフィットすることができているかどうかという部分です。
 フィットしていない状態では、組織との間に隙間があるか(これは物理的にのみでなく)、クライアントの組織を刺激してしまっているかどうかという2つのうちどちらかに当てはまります。隙間があれば、クライアントに不安を想起させる可能性もありますし、その内部で起こっていることに対して、組織も反応が連鎖していきますので、交感神経系が優位になってしまったり、背側迷走神経複合体が優位になりかねません。セラピストのハンドリングがフィットしているかどうかによって組織の反応も変化するのです。これは意図的にそのようにしているかどうかによっても、組織の反応を追随する際のアセスメントは変わってきます。
 そして、パルペーションテクニックの中では、モニタリングを行ったり、アプローチを行ったりしますが、その中でも、この組織へのフィットという部分は適切に・正確にモニタリングとアプローチを行う際に重要になります。
 今、どの組織の反応を追いかけているのかどうかが明確でなければ、徐々にカオスの状態へと陥ります。なんとか、左脳を使用して、うまく収めようとしますが身体の反応や反応性は正直なので、クライアントの方と対面した後に反応が想起されてしまうこともありますし、時間がオーバしてしまう可能性も生まれてきます。

 組織へのハンドリングのフィットはこれほど重要ですし、この組織へのハンドリングフィットができるようになれば、アセスメントやアプローチの明確さがより鮮明になると思いますよ。

組織をフェーズで捉える

 次に「組織をフェーズ(層)で捉える」という部分についてです。
 上記では、「組織へのフィット」という視点でしたが、フィットする組織は身体においてはフェーズで分かれているので、フェーズという視点をパルペーションの視点として取り入れてみましょう。このフェーズといっても、組織ごとの厚さは異なりますし、左右を比べても異なると思います。その日その日の調子によっても異なりますし、食事による栄養面も影響をしてきます。季節によっても変化します。
 この組織のフェーズという視点は、単にその組織を触れているというだけでなく、1つの組織の中でもフェーズを考える訳です。例えば「皮膚」であれば、表皮なのか真皮なのか、皮下組織レベルに対してパルペーションをしようとしているのか。筋肉で言えば、筋膜レベルなのか、筋腹レベルなのか、筋肉の表側なのか、骨や関節に近い部分なのか。など、1つの組織によってもセラピスト自身がその組織のどの部分に対して視点を向けているのかどうかという視点を持つことが重要です。
 というのも、その視点がなければ、真に症状や動きの起因となっている原因部分を見つけることができないからです。全体性を見ることも重要ですし、全体と局所を見ることも重要。このフェーズというのは、全体性の中での「層」とも言えますし、局所性の中の「層」とも言うことができます。
 局所の見方もその視点を多角的にすることによって、症状や動きの原因・起因部分の捉え方も膨らみ、関わりの手段の引き出しを増やしていくことができるのです。

 

モニタリングと反応性

 次に、「組織に対してのモニタリングと反応性」についてです。これはアプローチでも、評価でもどちらを行う際にも欠かすことができないものです。
 モニタリングとは、対象としている組織の状態の変容・変動を追跡し続けることです。パルペーションによって組織の同定ができたのであれば、その組織の状態を常に把握し続けるのです。このこのモニタリングができれば、今その組織はどのような状態なのかどの方向性に向かっているのかどうかを常に把握することができます。組織の反応や反応性を待っている時にも、モニタリングは常に行なっています。
 モニタリングは観察する視点であり、評価している組織や焦点を当てている組織の状態を見るテクニックです。
 このモニタリングは実際に触れながら行うこともできますし、視診の中で行うこともできます。
 モニタリングの視点を持つことで、セラピスト自身のセラピーの方向性を常に自己フィードバックすることができるようになりますよ。

身体のバウンダリーとパルペーション

 次に「身体におけるバウンダリーとパルペーション」です。パルペーションテクニック自体は、直接触れることもありますし、インテンション(意図)を向けることによっても行われます。組織へのフィットの項でもお伝えしましたが、フィットしていない状態であるということは、組織と距離がある、もしくは、組織に圧が加わっている(これは侵襲的という意味で)可能性があります。もちろんインテンションとしてはフィットの感覚を保ちながらも、実際のタッチの圧はフィットしていないという2重テクニックもあります。

 バウンダリーとは境界線のことであり、この境界線によって、「安全が否か」を判断しています。ステファン・W・ポージェス博士はこれをニューロセプションと定義しました。この安全か否かの部分では、ポリヴェーガル理論でも述べられている「腹側迷走神経複合体」、「背側迷走神経複合体」、「交感神経系」のどの神経系が優位となっているかどうかという視点が重要です。交感神経系による「戦うか逃げるか」という反応が生じている場合は、バウンダリーは侵されているかもしれません。距離や安心感を確かめ合いながらコミュニケーションをとっていけば、腹側迷走神経複合体の働きによって、常に統合された状態でのやり取りが可能となります。

 このように、バウンダリーの理解があれば、パルペーションの際に生じている反応はどの神経系が働こうとしているのかを理解するのに役立ちます。
 この部分に対して、セラピストは自分自身に意図的であることによって、安全な場を提供できているか否かという部分にも視点がいくようになります。

 侵襲的なタッチなのに、動かせと言われても、神経系が反応として動けないこともありうるのです。
 次の項でも述べますが、過剰な反応とトラウマにならないよう、最新の注意を払い続ける必要があります。

過剰な反応に注意

 ここまでで、フィットの部分やフェーズの部分、バウンダリーについてお伝えしてきました。これらの中で、モニタリングによる組織の状態の追随ということもお伝えしましたが、ここではその部分をもう少し細かくみていきます。

 上図にもまとめたのですが、パルペーション・モニタリングしている組織は、その瞬間-瞬間に状態は変容し続けています。これは微細であってもです。組織の状態が変容しているということは、セラピスト自身のパルペーションも常に変化するかもしれません。もちろん、パルペーション自体の変化をしないことによる意図があれば、変化をあえてさせないということも行います。前回の記事でお伝えした内容は、常に変化し続ける可能性もありますし、変化しない可能性もあるということになります。
 だたし、「過剰な反応」が生じてしまいそうな場合(これはセラピスト自身のニューロセプションにもよる)は、そのパルペーション自体を控える、強める、意識付けする、意図をより明確にする、変化させると言ったように、同じ刺激になり続けないようにする必要があります。
 過剰な反応とは、失神が起こりそうな、または炎症が再燃しそうなといったように神経系の反応性が急速に生じる反応のことです。
 腹側迷走神経複合体が神経系をバランスしてくれている状態では、なだらかに反応が生じるため、急速な反応は起こりません。というのも、腹側迷走神経複合体は有髄神経であるため、他の自律神経系より神経伝達が速いが故に、そもそも、交感神経系と背側迷走神経複合体の働きのバランスを調子してくれているためです。

 過剰な反応は大きさよいうよりは、その反応の速さに注目する必要があります。

 パルペーションを行う上で以下の意識は重要です。

①Too muchにならない。(強すぎたり、弱すぎる刺激にならない。)

②Too fastにならない。(速すぎにならない。)

③Too soonにならない。(すぐに展開しすぎない。)

この3つの視点を持ちながら、組織の状態を把握し続けることが重要になります。

組織反応の再燃

 次に「組織反応の再燃」についてです。ここではモニタリングにおける、組織の反応について細かくみていってみましょう。
 組織反応の再燃とは、負荷(刺激)に対して、組織が反応することで、変化をさせずにそのまま止まろうとする反応の1つです。アロスタティック負荷とも言われます。
 例えば、筋肉が硬いのでストレッチして伸ばして、筋肉を柔らかくしようとするとします。ですが、筋肉はゴムのような作用がありますので、伸ばされれば緩まずに逆に縮まる方向の力が入りやすいという特性があります。これは筋紡錘による筋肉の長さを調整するための反応や、筋肉組織自体が硬い場合があります。前者では筋肉は逆に縮まり、より硬さを感じる可能性があるのです。生理学的に言えば、「ホメオスタシス」ということもできるでしょう。
 しかし、その組織の再燃によって組織の状態が維持されるということは、身体の運動連鎖のパターンも再燃するということになります。このパターンの再燃というのは、よく起こります。というのも、人間は極力パターンで動けば、考えなくても良いですし、新しく学習をしていくということをしなくても良いので結果的に楽なのです。
 この状態で症状や動きが円滑でなければ、再燃を繰り返せばその症状の寛解は望めません。動きの円滑性も獲得することができません。

 では、再燃させてはいけないのか。というとそういうことではなく、再燃することは当然あり得ることなので、念頭に起きながら、計画を立てていく必要があるということになります。過剰な再燃は新たに症状を生む可能性がありますので、良くはありません。この再燃自体が変容していくにはどの程度の期間が必要なのかです。
 組織の炎症1つとっても、再燃と寛解を繰り返す場合もありますし、これによって反応する神経系も徐々に変化していったり、ホルモン系の分泌も変化していき、慢性炎症や慢性疼痛に移行してしまうのです。なので、長い時間が必要になります。大きな変化その反動も大きいということも念頭にパルペーションテクニックを使用していただければと思います。

トラウマ反応の再燃

 次に「トラウマ反応の再燃」についてです。再燃については前項でお伝えした通りです。ここではトラウマ反応に着眼点を向けてみましょう。トラウマ反応としては、自律神経系で言えば、「過剰な反応」と言い換えることができます。実は、「過剰な反応」と「再燃」がトラウマ反応の背景にはあるのです。トラウマというと捉えにく場合は、「パターン」ということばに捉え直していただければと思います。「反応のパターン」です。自分が意図しているわけでもないのに、刺激に対して、ある特定のパターンが腹側迷走神経複合体による統合やバランスがない状態で表出・出現してしまうことです。
 パターンの変容を望み、運動の円滑性の改善を図っていくのであれば、その反応性に着眼点を持っていく必要があります。反応性に対して、クライアント自身がモニタリングできているかどうかです。モニタリングができているということは内側前頭前皮質の働きによるボトムアップによう情報収集と表出の判断がなされているわけですから、反応についても再構成していくことができるのです。この反復によって、神経系のシナプス形成がなされます。神経系はそのパターンが強化されれば、シナプスを強化します。逆に使わない機能に関しては、神経の刈り込みが起こり、神経伝達自体が起こりにくい状態になります。
 身体を新たなパターンで使うことによって、最初はシナプス形成というよりはスイッチを入れていく練習になります。スイッチが入るようになれば、今度は神経の発火頻度自体を上げていき、その結果として、血流の増加や筋肉や関節による感覚入力がなされます。最終的にはシナプル形成が成されるわけですが、シナプス形成がなされる時期には、血管支配数や神経支配数の変化も生じています。(運動単位で言えば、1本の神経が支配している筋肉線維が少なければ少ない程、細かな動きが可能になります)

 再燃と過剰な反応の変容は内受容感覚による感覚の統合と内側前頭前皮質による調整、パターンによるシナプスの調整とシナプスの再形成が必要であり、そのパターンの変容をもたらす力が、パルペーションには備わっているということになります。

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この記事を書いた人

Daisuke Nobuchika

・Bodywork Salon Compasses代表
・Somatic Neutrality®考案者
・Dibs®︎考案者
・Innate Pilates®︎考案者
・運動連鎖整体®︎考案者
・理学療法士
・Somatic Experiencing™ Practitioner(SEP)
・DARe Practitioner
・Somatic Experiencing™︎ マスタークラス Eye of the needle(Ⅰ&Ⅱ)修了
・Somatic Experiencing™︎ マスタークラス 慢性疼痛と症候群 修了
・Sequencing Workshop 修了
・Yoga Teacher(Kaivalyadhama Yoga Institute Certificate Course in Yoga修了)
・Somatic Resilience and Regulation®修了
・DE GASQUET®INSTITUT基礎講座、ぺリネのABC受講修了
広島県福山市出身。小学校から社会人にかけてバスケットボールに積極的に取り組み、全国大会やAll Japanに出場。高校生の時に人の役に立つ仕事に就きたいという思いと部活動のトレーナーが理学療法士であることもあり、理学療法士を志す。2011年、理学療法士免許習得。総合病院、整形外科病院在籍中にピラティス、ヨガに出会う。2017年ファンクショナル ローラー ピラティス マスタートレーナーコース修了。2022年SEP取得。同年SRR修了。2023年Kaivalyadhama Yoga Institute Certificate Course in Yoga修了。現在、理学療法士とサロンでのセラピストとして活躍中。 また、臨床中に患者様と関わる中で「病気になる前の予防の重要性」を感じ、『病気に囚われない予防の実現』を人生のテーマに日々邁進している。

 

Bodywork Salon Compassesとは

こころとからだの指針を紡ぐBodywork Salon Compassesではヨーガとピラティスなど心身のアクセスを通じた心身コンディショニング・姿勢の改善、タッチセラピー(マッサージ、整体)による痛みのケア(関節痛、首痛、頸部痛、首コリ、肩凝り、背部痛、腰痛、股関節痛、膝痛、足痛や足部の変形:外反母趾など)、循環改善・むくみケア、姿勢と歩きの改善を行っています。ホームページではセッションの内容や料金について詳細がわかりますので、「ホームページはこちら」をクリックしてのぞいていみてください。

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